去る8月5日に、通訳者として各方面でご活躍のサミュエル周先生をお招きし、『通訳ワークショップ サミュエル周先生と通訳の現場体験』を実施しました。簡単ですが、内容をご紹介します。
まず、通訳とは何かについて『通訳学入門』(フランツ・ポェヒハッカー著 鳥飼玖美子訳 みすず書房)を参考に、通訳の定義、作用、伝達方式(音声か手話かなど)、通訳の方式(逐次か同時か、ノートをとるかとらないか)、訳出する言語の考え方(母語か、母語並みに熟達した言語か、聞いて理解できる言語か)、通訳者の立ち位置(プロか、素人か、訓練を受けていないバイリンガルの通訳か)というような「通訳」というものの内容をお話しいただきました。また、通訳という仕事の特徴(「対人志向」、「行動志向」で取り組むべき)、通訳としてもつべき能力として認知能力(運用言語の熟達、理解力、一般教養・知識、分析力、記憶スキル)や、道徳的・情動的資質(気配り、慎重さ、鋭敏さ、落ち着き、集中力、声質、人前で話す能力など)が挙げられるということをお話しいただきました。
第二部では、9人の学生代表に実践として中文日訳、日文中訳を体験してもらいました。中文日訳は北京の紹介となる内容を、3つのパートに分けて通訳してもらい、それぞれ通訳者の態度や、話し方、訳出した内容に過不足がないかどうかなどをチェックし、通訳やノートテイキングに伴う問題を回避する方法などをご教示頂きました。次に、日文中訳では原宿の案内を用い、さきの学生代表を2グループに分け、合議の後、発表してもらいました。中文日訳の際と同様の注意点の他、日本語を中国語に訳出する際に選ぶ中国語の言葉の考え方などをご指導いただきました。
最後には時間の関係で少人数ではありましたが、通訳のAI化、「コンサルテーション通訳」のような説明を要する通訳についてのご質問にもお答えいただきました。
いずれも先生の実際のご経験、現場でのこぼれ話、アドバイスがふんだんに散りばめられ、お人柄のにじみ出た温かく、楽しい有意義なワークショップでした。
2017年8月5日